豆腐プロジェクト特集「1年の記録」
2020年4月26日
「始まりは塩だった」
江戸時代から製塩業で盛えてきた直島。毎年国内外からたくさんの人が訪れる地中美術館が建てられた場所も元々塩田だったように、かつては島のあちこちで製塩が行われていた。
戦後、一度は途絶えた直島の製塩技術だが、それを継承しようと2009年、直島の天日塩SOLASHIOが誕生した。SOLASHIOはフェリー乗り場でも手軽に買うことができ、メニューに取り入れる島の飲食店も少なくない。私たちのカフェでもSOLASHIOを使ったアイスクリームを提供しており、天日塩特有のやさしい風味が好評だ。

お土産としても人気のSOLASHIO
直島町観光協会ホームページより
そんなSOLASHIOについて私たちは数年前、塩をつくるときに出る苦汁 (にがり) が島外へ安価で売られているという事実を知ることになる。直島の苦汁を直島で活用できるよい方法はないだろうか。そんなとき、頭に浮かんだのが豆腐づくりだった。豆腐をつくる工程で液体の豆乳を固めるために使われているのが苦汁なのだ。SOLASHIOから出る苦汁で豆腐をつくって食べれば、地産地消を実現できるのではと思った。
「直島で一から豆腐をつくりたい」
このプロジェクトで初めて豆腐をつくったのは2017年。このときはSOLASHIOの苦汁を活用することを最大の目的としていたため、大豆は市販のものを使って豆腐をつくった。しかし、プロジェクトを進めるうちに大豆も直島のものを使いたいという話になり、翌年に直島小学校の畑を借りて大豆を育てることに。大豆の栽培から豆腐をつくるまでの約半年間の計画は2年生の授業に組み込んでいただき、見事小学生と一緒に直島の大豆で豆腐をつくることに成功した。

初めての豆腐づくり。このときは市販の大豆でつくりました。

翌年は自分たちで育てた大豆を使って。

準備してきた豆腐クイズは大成功。
「豆腐プロジェクト2019始動」
2019年春、2年目となる完全自家製の豆腐づくりは直島小学校の畑に苗を植えるところから始まった。大豆を育てるのは今年も2年生の担当。水やりは、平日は小学生が、土日や夏休みは私たちと小学校の先生方で手分けして行った。
大豆は順調に育ち、十分に鞘が膨らんだ夏の終わりに刈り取り、乾燥の工程へ。約2ヶ月間しっかりと乾燥させ、秋に小学生と一緒に大豆を鞘から取り出す作業を行った。この小さな粒がおいしい豆腐になるのかぁ。小学生と何気ない話をしながら私たちもわくわく。
今年度は2年生以外にも豆腐づくりを体験してもらいたいという思いから、小学校の授業とは別日に私たちのカフェでも体験教室を開くことになった。鞘取りを終えた大豆を大学に持ち帰り、さっそく豆腐づくりの準備に取りかかった。

5月、直島小学校の畑に苗を植えました。

順調に育ち、ひと安心。

11月、乾燥した鞘から大豆を取り出しました。

丁寧に収穫していきます。

季節はもう秋。肌寒い季節ですが、小学生は半袖。
さすが、子どもは風の子…!

大学に戻ってさっそく豆腐づくりの作戦会議。

豆腐の試作は回数を重ねるごとに上達。
「いよいよ、にがりの出番」
2019年度第1回目の豆腐づくりは一緒に大豆を育ててきた2年生と小学校の家庭科室で行った。苦汁とは何か、最初にスライドで勉強してから調理スタート。約半年がかりで完成した初めて自分で一からつくった豆腐。子どもたちは「おいしい!」と喜んでくれた。

先生と念入りな打ち合わせ。

"にがり"って何だろう。みんな興味津々です。
